カタクリ塚やたぬき塚には、白や紫色のタツナミソウが咲いています。日当たりが良く乾燥しがちな斜面に、草姿も愛らしくあちらこちらに自生しています。緑の中に紫色や白色が目につき、立ち止まってしまいます。
和名立浪草は、花を横から見た形が波頭のように見立てたのが由来です。茎の先に縦に並んで立ち上がって咲く花の様子が、泡立つ波のイメージです。東アジア原産で、日本にも自生しとても育て易い植物です。茎の断面が四角形で、草丈30㌢ほどのシソ科の多年草です。茎は直立し全体に白い毛が密生し柔らかい感触です。茎のてっぺんに白い花穂を出し、長さ2㌢程の唇形花をつけます。地下茎やこぼれ種でも殖えます。春の芽出しの頃に株分けしたり、さし芽もできます。鉢や寄せ植え、石付け、盆栽の脇役にも適しています。
「この花、北斎の浮世絵の波に似ているね」と、見学者たちとの花談議はとても楽しいです。先日、堀之内の友達が「この絵見て」と一筆箋に描かれた絵を見せてくれました。それは、葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景神奈川沖浪裏」でした。この絵の波頭にそっくりなタツナミソウです。
初夏に入り人立ち止まる立浪草