見返り坂の日当たりの良い場所では、冬に赤い芽を出し、三月に入ると少し葉を広げ、四月初めに褐色のナツトウダイの花が咲き出しました。夏と名前がつくのに、トウダイグサの仲間では最も早く春に花をつけます。
和名夏灯台は、昔明かりとして使った灯台に全体の形が似ているのが由来です。草丈四十センチほど、葉は楕円形、茎の先に輪生する五枚の葉のわきから枝を出し、花をつけます。この花の特徴は、腺体と呼ばれる部分です。U字型のものが四個付いていて、昆虫を誘うための蜜を出します。緑色の玉の部分は、熟すと実になります。茎を切ると白い液が出る毒草です。昔の子ども達は、野山でトンボを捕まえて、ナツトウダイの白い液を、「おっぱい飲ませっぺ」と、トンボの口にあてて、ぱくぱくする様子が面白いと遊んだそうです。
小菅の老夫婦にナツトウダイを見せると、おばさんは上にかざし、「こうもり傘みたい。自然はうまくできてるよ」と言い、おじさんは、「葉はみんな同じ間隔で、幾何学模様で狂ってない」と、それぞれ感心していました。まるで誰かが考えて作ったような植物の姿の不思議さに、感動した楽しい時間でした。
初夏に入りつんつん伸びる夏灯台
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