今年もフナバラソウに会えるかと、野草園入口の日当たりの良い場所を探しました。少し離れた草むらに、やっぱり咲いていました。毎年場所を少しずつ移動して咲きます。
和名舟腹草は、実の形を舟の胴体に見立てたことが由来です。別名ロクオンソウとも言われます。草丈六十センチほどで、まっすぐに立った茎は、枝分かれせず存在感のある多年草です。葉は楕円形でビロード状の厚い葉に柔らかい毛があり、茎に向き合うように生えています。上部の葉の脇に黒紫のチョコレート色の花を数個つけます。水野葉舟が書いた『三里塚散歩』の中に、『それから、思ひついて梅林の方に歩いて行きフナバラサウの花を見にゆく。もうあの黒ずんだ紫のガガイモ科の草特有の星形の花が開き始めてゐる。その傍にあるスイカヅラの花の甘い匂ひが、柔かに漂ってゐる』と、書いてあります。昔から、旧遠山村辺りは野草の宝庫だったことが伺われます。
十年も前のことですが、押畑に住む女の人が「毎年この花が咲くのですが、花の名前を教えてください」と、持って来てくれました。たった一本咲く貴重なフナバラソウです。
初夏に入り人目につきし舟腹草
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